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建築業をサービス業に変えていくイノヴェイターとして生きていく
好きな歴史上の人物を教えてください
坂本龍馬

(幕末に活躍した政治家・実業家。土佐藩郷士の次男として生まれる。土佐藩脱藩後、亀山社中、海援隊の結成、薩長連合や大政奉還の成立に尽力するなど、志士として活動した。京都・近江屋で何者かによって暗殺される。)

あくまでイメージなんですが、類まれなイノヴェイターだった、革新的だったという点で好きですね。これが面白い、と思ったら、人の目を気にせずどんどんチャレンジしていく。世界には面白いものがたくさんある、と思ったときに、龍馬にとっては幕府も藩も関係なかった。亀山社中なんかそうやって出来たわけですよね。僕も、建築業界のあり方はおかしいと思ってます。例えばヴィンテージカーを買って、それをリビングに置ける家を作りたいんやと言って、それに対応できる建築屋さんなんてまずいないですよ。「できない」と言うはずです。でもそれはフェアじゃないと思うんです。お客様は何千万円も使うのに。「できない」の真意は、「やりたくない」か「したことがない」でしょう。チャレンジもしてないのにできるかできないかを決め付けている。要は保守的なんです。他のどの業界だってお客様の満足ということが先に立っているのに、建築業界だけ業界の論理、企業の論理で動いてる。そんな業界に風穴を開けたいという想いはありますね。
座右の書・感銘を受けた本を教えてください
鉄道員

浅田次郎著

浅田次郎の本で初めて読んだのがこれです。33歳で大きな病気をして入院したとき、病院で読みました。子供がまだ2、3歳の頃だったんですが、自分が生きるか死ぬか、という話になっていたせいか、この本を読んだときにびっくりするぐらい涙が出たんですね。子を持つ親になって、またそれを深く自覚して、自分自身の感覚が変化した頃だと思います。ちょうどその変わり目に読んだのが浅田次郎だった。それから彼の本はほとんど全部読みました。天才ですね、やっぱり。必ず笑かして必ず泣かせる。心の中に、ものすごく振り幅の大きい、ジェットコースターのようなひだがたくさんある人だとおもいます。浅田次郎の本に出てくる人は、必ず表裏というか、良い面悪い面が両方ある。そこに泣き笑いというか、人間味あふれる世界がある。単純に「好き」やなあと思います。
習慣としていることを教えてください
年1回の家族との沖縄旅行
もう5、6年ぐらいになりますね。最初は米軍による放出品家具の仕入れで行ったんです。そこでテレビでは報道されてない沖縄というのか、現実を見てすごくショックを受けて、それでいっぺんに虜になった。戦争の話や、米軍に占領されていたころのこと、そして現在の基地の話を、現地でじかに聞いたりするとすごいですよ。ひどい。日本人はあれが日本の戦後なんだということを、もっと知らないといけない。僕らも毎回必ず平和祈念公園に行くというわけではないけれども、こういったことはきちんと子供に話をして伝えていかないといけないと思っています。沖縄でどんなことがあったのか。今でも沖縄の27%は米軍基地です。その基地を運営するのに我々の税金まで使われてる。きつい話ですが、リアルですよね。それが第二次世界大戦からずっと続いている流れなわけです。みんな、沖縄に遊びにいくだけじゃなく、その歴史と現状を知って、忘れないように生きるべきだと思います。
生き方・考え方に影響を与えていると思う出会い、言葉を教えてください
裁判所で被告よばわりされたことと、生死をさまよう病気になったこと
言葉や出会いを一つだけ挙げるのは難しいのですが、自分の生き方・考え方に影響を与えている“出来事”なら挙げられます。以前勤めていた会社で雇い主の保証人になっていて、そこがつぶれたんです。25歳のときです。雇い主が破産したためにその借金を代弁済しなければならなくなりました。裁判所から通知が来て、弁護士を雇うお金もないから弁護士会館に相談しにだけ行って、破産宣告を薦められたけど断って。裁判所に出廷すると、被告席に立たされて、「被告人」と呼ばれて、テレビみたいに裁判が進んで…。2回の出廷の後、和解しましょうと言われて、毎月少しずつ払い続けることになりました。結局その借金は完済しましたよ、一人で。他人の借金を返してきたんだから、お金のことで、自分のことぐらいはなんとでもなると思えるようになりましたね。
そしてもうひとつ大きかったのが病気のこと。感銘を受けた本のところでもお話ししましたが、大病を患って、死ぬかもしれないと言われました。子供にもう会えないと思ったら、人生これほどつらいことはないですからね。借金と病気。これらを体験したから、どんなことがあってもくじけずにやっていけると思えますよね。
最後に京都という地で事業を展開してよかったこと、大変だったことを教えてください
京都には伝統と革新の風土がある
もともと京都ってそれほど好きではなかったんですが、最近ようやくここで生まれ育った事が良かったなあと思えるようになってきました。京都には伝統と革新が共存しているというか、古いものがたくさんある一方で、さまざまな分野で京都出身のイノヴェイターがたくさんいて、僕自身影響を強く受けています。
僕は自分が建築業をやっていることについてもずっと違和感があったんです。それが最近、自分がやっているのは建築サービスなんだということに気づいたんですが、やっぱり僕の中では飲食店での経験が息づいてるんですね。飲食業というのは一見きらびやかだけれども、小さなものをコツコツ積み上げていく地味な商売です。建築業や工事業は他の商売に比べて扱う金額が大きい業界ですが、僕は徹底して小さなものにこだわっています。昨年1年間で依頼いただいた案件が1088件。たいていの方がびっくりされる案件数です。小さなことをおろそかにせず、顧客目線を大事にしていきたいと思っています。
そんな風にお客様に建築サービスを提供していく中で、この京都という土地の伝統文化、そして建築業の長い伝統・風習に新しい風を吹き込んでいくことができれば、面白いものが生まれるんじゃないかと思ってるんです。
    
(記載内容は2007年9月時点における情報です)