経営者の生き方から自分を活かす働き方発見・学びサイト「CEO-KYOTO」

自分の生き方を見つめて 苦しくとも精一杯生きる
好きな歴史上の人物を教えてください
山田方谷

(幕末の陽明学者。十万両の借財に苦しむ備中松山藩を8年で建て直し、さらに十万両の蓄えを築いた。維新後、その功績を評価され、明治政府より再三にわたって出仕を請われるも応じず、生涯を郷土の子弟教育にささげた)

僕は独立後、27歳の時に今の金額にして数億円の借金を背負ってしまった。未回収金の発生や工場を任せた人に取次店を乗っ取られるような事態もあって、人が信じられずどん底の時期やった。その苦しい時期に出会ったのが山田方谷。
十万両の借金といえば、一両を約4万円としても40億円やな。それを「必ず返す」と誓って、藩に大倹約令を出した。自分は他の藩士の倍の減俸をして、家計を他の人に任せてガラス張りにしたんや。その上で新事業に投資し、税を軽減して農民を保護することで生産性をあげていった。リーダーとして全てを賭けてことに望むんやね。その考え方の根本には『致良知』『知行合一』という陽明学があるんやけど…。
今通っている『早稲田大学大隈塾』の卒業論文ではリーダーシップについて書いていて、方谷の生き方を知るほどに、学ぶことが多いと感じるね。
座右の書・感銘を受けた本を教えてください
十五少年漂流記

ジュール・ヴェルヌ著

盲腸で入院した10歳のとき、小学校の先生がお見舞いにもって来てくれた本なんやけど、この本が一番好きやね。『協力する』ということを教えてくれた。
協力しないと目標は達成できない。そして協力するためには『全員一致』できないと力が出ないんやな。そのためにはトップになる人間がまっすぐな理念を立てること。理念にはほんの一分でも功利的な欲望があってはいけない。そして、同時にその思いを家族に本当の意味で理解、納得してもらうこと。「自分にはこんな思いがあって、こうするから」ときちんと妻や子どもと話し、一番小さな核である家族を一致させる。その上で、トップが一分の隙も無く「世のため人のために役立っていきたい」と思って突き進んでいれば、人はついてきてくれるのではないかな。
習慣としていることを教えてください
深夜2時の読書 早朝5時半からの仕事
27歳で借金を背負ったときは、信じていた人に騙された辛さと人間不信のどん底やった。それでも借金返済目指して、「何とかなる。なんとかする」と言い聞かせながら死に物狂いで働いたんやけど、やっぱり夜は眠れないんやね。何とか寝付いても、夜中の2時に不安でふと目が覚める。いわゆる不眠症や。それで「どっちみち眠れへんのやったら…」とかたっぱしから本を読み始めた。
本は何でもいい。真夜中、シンとした中で一人本を読んで、自分を振り返る。そして、そのまま朝5時半から仕事を始めるんや。人が寝ている間に、涼しい頭で考え事をする。するとね、自分の運命を良くするも悪くするも全部自分の中にあるということに気づいてくる。
自分の苦しみを人のせいにして逃げるのは簡単や。それで楽になれるかもしれん。逆に『騙されたのは騙される自分の側に問題があるんちゃうか』と思うのは苦しい。それでも苦しんで苦しんで苦しんで…、自分の中に問題点を探し続けると、自分の人生が良い方向に進むようになる。そして運命は好転するんや。だから、今こうやって世界のクリーニング業界から注目されて、テレビや雑誌で取り上げられる会社を作れた。それは全て騙されたお陰やと思っているし、この2つの習慣のお陰なんちゃうかな。
生き方・考え方に影響を与えていると思う出会い、言葉を教えてください
母、小学校の先生、中学校の先生、高校卒業後入社したメーカーの社長
幼い頃からずっと母には『為せば成る為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり』と言われ続けたね。そして小学校の先生には『根性』といわれた。中学の時に印象に残っているのは、『食って寝て起きて糞たれて…そんな漫然とした生き方はするな』という言葉。最初に勤めたメーカーの社長には『稲穂は実るほど頭を垂れる』という言葉をもらった。その4つが、自分の中に大きく残っている言葉やね。
最後に京都という地で事業を展開してよかったこと、大変だったことを教えてください
京都は世界のブランドである

ファッションと環境の先進国ヨーロッパ視察に行って、「『京都』というのは世界に通用するブランドなんや」と、肌で感じたね。『京都議定書』のイメージもあってか、『環境に配慮のある街』と思ってもらえるのも大きなメリット。もう一つは、この街の文化の素晴らしさ。有機溶剤を使わずに98%の汚れを落とす水系洗浄『無重力バランス洗浄法』も、実はヒントを友禅流しからもらった。そういう昔の人の知恵や日本人が大切にしてきた思いが息づいているというのも、京都が世界から注目されるひとつやと思うね。

(記載内容は2007年4月時点における情報です)